「浩一・・・・?」
千里は小さな声で俺を呼んだ。
でも、俺は振り向くことが出来なかった。
だって、俺の瞳には・・・
涙が溢れて止まらなかったから・・・。
俺は聞こえない振りをして、ひたすら歩いた。
俺のすぐ後ろで歩く彼女は、
きっと寂しい顔をしていただろう。
だって、千里は俺が大好きだから。
家族として、弟としての『浩一』が大好きだから。
俺はこんなにも、
女としての『千里』が好きなのに・・・
どうしてもお前は、
俺を男としてみてくれない・・・。
なぁ、千里。
一度でいい。
ほんの一度でいいから、
俺を・・・男として見てくれよ・・・。
見てくれたら、
俺、絶対千里が好きになるような男になるから。
俺を見てくれよ・・・・。
静かに涙を流し、
心の中で、俺は何度も同じ言葉を叫んだ。
