俺の家族は、どこにでも居るような
ごく普通の家族だった。


特にお金持ちな訳でもなければ、
貧乏な訳でもない。

本当に普通の家族。


普通だったけれど、

俺は幸せだった。




父さんは、家庭を大事にするいい父親だった。

俺が小さかった頃はよく遊んでくれたし、
いろんなところに連れて行ってくれた。


いい父親だったけど、
よく人に頭を下げていたのを覚えてる。

その姿は、俺にとって格好悪い姿だった。


だから、1度だけ父さんに言ったことがある。


「父さん、何でそんなに謝るんだよ!すぐに頭なんか下げるなよ!」
「男のプライドは無いのかよ!!」

こう言った時、父さんの顔はすごく悲しそうだった。
その表情を見て、俺は少し戸惑ってしまった。

「何でそんな顔するんだよ・・・。」

「浩一、ごめんな。こんな格好悪い父さんで。」


「でもな、頭を下げることなんて、全然苦しくないんだよ。」

父さんが俺の肩を掴んで、まっすぐ俺を見る。

「父さんが頭下げるだけで、何かが良くなるんだったら、男のプライドなんて簡単に捨てられるんだよ。どうしてか分かるか?」

「分かんないよ・・・。」

「父さんには、守りたいものがあるからだよ。」

「守りたいものって何?」

「それは、お前だよ。」

「え?」

「お前や、母さんや、千里。家族みんなだよ。」

父さんは、すごく優しい表情で言った。
俺はすごく嬉しかった。



「浩一、お前も大きくなったら、きっと守りたいものが見つかるだろう。」

「その守りたいものの為なら、お前は何でもしないといけない。」

「分かったか?浩一。」

「うん。俺も父さんみたいに、強くなるよ。」