「…ふむ。どうしたものやら」
 日曜日の昼下がり。御言は一枚のメモ用紙を片手に、街中で立ち尽くしていた。
 先週の金曜日の放課後の事だった。
「こ、今度の日曜日。私のお家でご一緒にテスト勉強しませんか?」
 と誘われたのだ。成績は常にトップクラスの葵に、いまさらテスト勉強が必要なのか疑問に思ったが、断る理由も無かったので誘いに応じたのだった。
 そしてその時、地図を渡されたのだが彼女には絵心と言うものがないらしく、地図を解読するには困難を極めた。
「彼女が俺をからかっているようには思えん。さてどうしたものか」
 駅から大体十分か十五分程度とは言われたが、これでは一時間は軽く過ぎてしまうだろう。
「……やれやれ。困ったものだな」
 途方に暮れていたその時だった。
「どうしたの? そんな今にも世界が滅びそうで、絶望してお風呂を覗こうかどうしようか迷ってる顔しちゃって」
 そこへ一人の少女が後ろから声をかけてきた。
「聞かなかった事にして話を進めるが、道に迷ってしまってね」
「ふ〜ん。どれどれ…って何これ? 何かの暗号書とか」
 さすがの少女も表情を歪ませていた。
「残念ながら本人いわく地図らしいのだがね」
「………これで?」
「ふむ。どうやら彼女に神は絵心を与え忘れてしまったようだね」
「彼女って彼女?」
 少女が小指を立てて見せた。御言は眼鏡の位置を直し、やれやれと首を振った。
「どこでそんな大それた事を覚えたのやら。君の期待に添えられないな。彼女は俺のクラスメートだ」
「へえ? クラスメートねえ………ってまさか」  そこで少女は何かに気付いたのか、ばつの悪そうな表情を見せた。
「これじゃ一生辿り着けないよ。ちょっとそのメモ貸して」
 少女にメモを渡すと少女は裏に新たな地図を書き込んでいった。