スーツの肩に腕を回して抱き寄せる。鼻先をかすめたあまい香水を胸一杯に吸い込む。

 先生の匂いだ。

 こんなにも好きだったなんて知らなかった。

「急に何するのよ! 警察呼ぶわよ!」

「俺、先生のことが」

 続きの言葉は先生が電話する声で封じこめられた。