俺の両親は、今日離婚することになっているらしい。

 「らしい」というのは、ちっとも興味がないからだ。

 商社マンで世界中とび回る父親に、化粧会社を経営する母親。二人が俺に興味がないように、俺は二人のことについて興味がわかない。

 離婚後、俺が大学を卒業するまでの住む場所と金銭的な援助を確約してくれたからあとはどうでもいい。

 そう思っていたはずだった。

 なのに、自分じゃまったく割り切れていなかったらしい。離婚が決まるまではかなり荒れた。

 家に帰っても俺に“家族”はいなかった。よそよそしい態度をとる母親と、滅多に家に戻ってこない父親。

 こんな時期に大学入試が重なり、俺は手当たりしだい暴れまわった。

 警察に厄介になることもあった。

 警察に囲まれてもなおも悪態をつく俺を迎えに来たのは、母でもない、父でもない。

「……先生」