「取られへんから、そのビー玉は綺麗なんやで」


「うん」


「ずーっと、取られへんけど
いつかお前がほんまにビー玉取りたくなったら
ほな俺がとったるわ」


「うん」





取れないビー玉が
綺麗なように

ケイの想い出も、きっとずーっと綺麗だ、と
遠巻きに伝え諭すミノルの顔にあたしは黙って見とれる。




「そのかわり、取ったビー玉はただのビー玉や。
不思議と全然キラキラしてないんやで。
だから、ラムネの中に転がるビー玉が一番綺麗んや。」




戻って来たらいけない、と
諭すミノルはあたしを傷つけぬまいと自身をビー玉を代役に立てる。

そんな野暮ったいミノルに
やっぱりあたしは世界一、この人を愛おしいと感じて胸を痛める。