戦国遊戯

信玄の屋敷を出て少し歩くと、ちらほらと家が現れ、さらに進んでいくと、建物が大きな通りをはさんで長くずらっと並んでいた。
時代劇でよく見る町並みだった。正直、自分の夢にしては、結構本格的に、建物としてはいい感じで再現されているのでは?と感心した。
たくさんのお店や町人たちであふれていて、とても活気のある町だ。なんだかとっても、ほのぼのとした気持ちになる。


元の時代って、便利だけど…なんか冷たい感じがするかも。


コンクリートで作られた建物にアスファルトの道路。鉄でできた乗り物に、忙しそうに、周りにはまるで興味もないといった風に過ぎていく人たち。

それに比べて、こっちの世界は…

「お、見かけないお嬢さんだね!どうだい、おいしい野菜はいらないかい?」

「あんた、よそからきたのかい?なら、すぐそこを曲がったところにあるお団子屋さんにいってごらん、すごくおいしいよ!」

こっちの世界のことなど何も知らない玲子が歩いていても、もちろん、友人でも身内でも、知り合いでもないというのに、いろんな人たちが声をかけてくる。


どんなに世の中が物騒だって言われたって、全然実感なかったけど…


ふぅ、とため息が出た。
何もかもが違いすぎるこの世界。なのに、なぜか居心地がよく思えて、まるで元の世界が夢だったんじゃないかと思えるくらいだった。

ふらふらと歩いていると、1人の小さな女の子が、手に包みのようなものを大事そうに抱えて歩いている姿を見つけた。


お使いかなんかかな?


その、ほほえましい光景を見て、つい顔がほころんだ。

しかし、すぐにそれも消えた。

後ろから男数人が歩いてきて、女の子にぶつかった。女の子は、手に持っていた包みを地面に落としてしまった。なかから、お団子がばらばらっと地面に散らかった。

「おいおい、お嬢ちゃん。あぶねーじゃねーか!ちゃんと前見てあるけよっと!」

そう言って、女の子を蹴り上げた。


――――ひどい!


思ったと同時に、玲子は怒鳴りつけていた。