戦国遊戯

「…田中くんはいないんですね」

きょろきょろとあたりを見回してみる。が、信長以外、誰も部屋にはいなかった。

「いつもいるわけではない。それに」

信長はそう言うと、玲子の側に寄ってきた。

「せっかくお主と2人きりになれたのだ。邪魔者はいらぬだろう?」

そっと囁かれる。が、なぜか怖くて仕方がなかった。政宗に耳元で囁かれる時とは違う。
そう、何かが。
恐怖に負けないよう、玲子は必死でぎゅっと手を握り締めていた。表情は硬い。

そんな玲子をみて、信長はふふっと笑った。

「さて、話がある、と申したな」

信長にくいっと顎を持ち上げられる。玲子は乾いた唇を小さく開けた。

「率直に言います。田中くんに、何を吹き込まれたんです?」

まっすぐに見つめてくる真剣な眼差し。信長は少し間をおいて答えた。

「それがお主となんの関係がある?」

信長の答えに、玲子はうっと詰まった。

「下手な腹の探りあいなど無駄だ。そうは思わんか?」

信長の言葉に、玲子は覚悟を決めた。

「…率直に言います。私は、田中くんをとめなきゃいけない」

玲子の言葉に、信長は首を傾げた。

「止める、か。一体、何を止めなくてはいけないというのだ?」

信長に聞かれて、玲子は少し困惑した表情を見せた。


田中くんが、天下統一を狙っているとしても、バカ正直にそのまんまを信長に伝えてるはずがない。かといって、天下統一を阻止しようなんて言えば、私はそのまま、イコール信長の敵ってなっちゃう。


うまい言葉が見つからず、口をあけては閉ざしていた。