戦国遊戯

慶次が歩き出すと、女の子達も、ぞろぞろと後ろからついてくる。玲子は、恐る恐る慶次と並んで歩いた。

女の子達の視線が痛い。そして、怖い。

「あ、あの」

慶次に声をかけると、どうした?と不思議そうに顔を覗き込んできた。

「や、あのさ。あの人達、なんか用事あるんじゃないの?」

ちらっと後ろを見る。ものすごい形相をしている。


やっぱ怖ぇぇ!!!


泣きそうになる。すでに心の中では号泣状態だ。

「気にするな。いつものことだ。それより、宿を早く探さねぇと。うまっちまったら大変だ」

そう言ってきょろきょろと慶次は辺りを見回した。
いくつか旅籠があったので、泊まれるかどうか、店の人に聞いてみる。が、どこも満室で断られてしまった。

「うー…どうしよっか」

頭をひねったところで、どうなることでもない。2人して、難しい顔をしていた。

「おい、慶次ではないか?」

声をかけられて、振り返る。そこには、1人町人の姿があった。少しばかり、小奇麗な格好をしてはいるが、見た目はなんとなく、農民といった感じのする人物だ。

「おぉ、藤吉郎じゃねぇか」

知り合いだろうか、なんだか親しげだ。

「何やってんだ?こんなところで」

藤吉郎に聞かれて、慶次は苦笑いをする。

「いやぁ、こいつがさ、例の山に住んでる奴をみてぇってんで、来てみたんだけどよ。着いたのが夜でな。ここで一泊しようと思ってたんだが、どこも宿が空いてなくてな」

「へぇ…で?この娘はお前さんのいい人なのかい?」

「なかなかの器量よしだし、腕も立つんだが、残念ながら、俺のじゃねぇんだ」

「ほぉ…珍しいな」

じろじろと見てくる藤吉郎。玲子は思わず眉をひそめる。

「あぁ、すまねぇ。紹介が遅れたな。こいつは木下藤吉郎、俺の友人だ」

藤吉郎は紹介されると、軽く会釈をした。

「藤吉郎、こいつは玲子。たまたま、知り合いのばあちゃんの家で会ってな。時々、話をしたりする友人だ」

玲子も、どうも、と会釈をした。