戦国遊戯

1本を、玲子に渡す。


一体、何を?

不審そうに、眉を顰める玲子をみて、謙信はにぃっと笑った。

「そこで、じゃ。今日は、玲子と柿崎に、一戦、この場で交えてもらう」

その一言に、その場が一瞬凍りついた。

「は!?」

一番驚きが大きかったのは玲子だ。

「玲子、お主はわらわより、信玄がよいと申しておったな。柿崎を倒すことができれば、信玄のもとへ戻ることを許してやろう。じゃが、もしも負けた場合は」

ばっと扇子を広げ、玲子のほうへと向ける。

「お主は、わらわに仕えるのじゃ」

「嫌だ」

間髪いれずに断る。が、辺りの温度が下がったような気がした。

「玲子、お主、わらわの余興に参加すると、約束をしたはずじゃが?」

言われて思いだす。確かに、了解している…

「約束は守らねば。のう?玲子」

鋭い目つきでにらみつけてくる。
びくっとなる。
まるで、蛇ににらまれた蛙の気分だ。

が。

蛙も時には牙をむくこともある。

「…本当に、私が勝てば、信玄さんの所へ戻ってもいいんだよね?」

「おぉ、信玄が望むのであれば、よいぞ?」

くくっと笑う謙信を、ぎろりと睨み返す。

「わかった」

「玲子!?」

幸村が何かを言おうとするが、それを信玄が静止した。

「玲子は物分りが良いな。では、早速」

そう言って、手を叩くと、侍女たちが四方に設置していた松明に、明かりをともした。柿崎が鞘から刃を抜き、こっちに突き出してきた。

覚悟を決め、こちらも鞘から剣を抜き出し、剣先をクロスさせた。