戦国遊戯

辺り一面が暗くなる。
雲ひとつない、星が一面に広がる空に、綺麗な月がぽつんとひとつ。辺りを淡く、照らすその月明かりを頼りに動く、3人の人影があった。

「玲子様、謙信様がお呼びです」

庭で演舞の練習をしていると、侍女の1人が声をかけてきた。動きを止めて、侍女のほうを向く。

「はい、すぐに行きます」

すっと差し出された手ぬぐいを受け取り、汗を拭きながら、侍女の後ろについていった。


連れて行かれた先は、謙信の部屋の前にある、大きな庭だった。
庭には、たくさんのお酒に食べ物が並べられていた。
食べ物の前には、謙信に慶次が座っている。謙信の横には、柿崎の姿があった。

そして。

「幸村さんに信玄さん!それに、さくらさんも!」

思わず声をあげた。そばに駆け寄ろうとしたとき、後ろから、男の人に腕をつかまれて、それを阻まれた。

「な、なに!?」

振り返ると、そこには長尾と呼ばれていた、先の戦で、自分が縛り上げた人物の姿があった。

「おぉ、玲子。きたかえ」

謙信が、妖しげな笑みを浮かべて、こっちを見ていた。

「さて、役者は揃った。これより、宴を始めようぞ」

ぱし、と手を叩くと、どこからともなく、笛や、琴の音が聞こえてきた。控えていた侍女たちが、それぞれに酒を酌んでいく。

「信玄よ、よう来たの。それほどまでに、あの小娘が大事と見える」

謙信の玲子を見る目が、今までにないくらい、冷たく、非情なものにみえた。

「さて、お主は玲子を取り返したいと思うておるかもしれぬが、残念じゃ。わらわもあの小娘のことを気に入った」

ふふっと笑って見せる。信玄は、黙って杯に注がれた酒を、一口飲んだ。

「さて。酒の肴に、ちょっとした余興を考えてみた。柿崎」

「はっ」

呼ばれて、柿崎は2本の太刀を持ってきた。

「ふふっ。わらわが初めて玲子を見たのは戦の場。そのとき、柿崎と一戦、交えておったようじゃが、残念ながら、決着はついてはおらぬようじゃった」