真っ白な白銀の世界。

昨夜から降りだした雪は
次の朝には一瞬にして、
別世界に連れていってくれる。
まだ、足跡すらついていない
この道をギュッギュッと
踏みしめる。

キィ―ンと耳が痛い・・・
吐く息は白く、冬の寒さを
物語っていたけど
私はあまり寒さを感じなかった。

それよりも大切な彼を失った
その心の方がずっとずっと・・・。

いつも一緒にふざけながら歩いた
この道を、目を閉じて頭の中で
ゆっくりと思い出す。

2年間・・・

スゥ―と熱い涙が頬をつたう。

大好きな彼。
我侭な私を時に叱ってくれた彼。
いつも笑わせてくれた彼。

目をそっと開け、
いるはずのない彼の姿を探す。


真っ白な世界・・・

ガクッと足の力がぬけ、
雪の上に膝をつくと、
私は冷たくなる指も無視して
目の前にある雪を掻き分けていた。

雪の日も2人で笑って歩いた
散歩道なのに・・・今は憎かった。

一夜にして消えてしまったその道と、
昨晩亡くなった彼を重ねあわせ、
止め処なく涙が溢れてくる。



(どこにいるの・・・?

嘘だよって言って

ここにいるよって笑ってよ。



由紀・・・って

もう一度呼んでよ。



あいたい・・・)