気がついたらボクらはヴァルトの玄関に立っていた。アイテムが大量に入ったカゴを手に。
取りあえず姉さんに文句言わなきゃ。とか思ったけど怒る気にはなれなかった。姉さんが監視してたおかげで、姉さんが作ったパンの家とワープ魔方陣があったからこうしてウチまでたどり着けた訳だし。
でも姉さんが行かせなきゃこうならなかったんだけどさ。
ボクの中でそんなモヤモヤが渦巻いていた。
そんな中で足はグレーテルといっしょにボクを姉さんのところに運んでいた。
「姉さん・・・ちょっと話が・・・。」
「あ、ヘンゼル、グレ子。お帰り。そしてお疲れ様。」
「ちょっ姉様兄様の話ぐらい・・・」
「わかってるわよ。監視するならどうして助けに来なかったのか。でしょ。ゴメンね、私も行きたかった。でも止められてたの・・・。」
「止められてたって誰に!?」
グレーテルは怒りに任せた感じでそう突っ掛かってきた。
「私でも逆らえない凶悪なヒトに。そうよ、アンタ達の母さん、つまり私の姉に止められたのよ!!」
姉さんは落ち込んだ目で全てを語っていった。
「迷子になったのを見た時私はすぐに助けに行こうとした。それでも彼女はそれを止めたの。ヘンゼルやグレーテルに助け出したらカゴの鳥のまま、世間知らずに終るって。だからああやって助けるしか方法がなかったの。」
そんな!姉さんはボクらのために助けに行けなかったのか。
「だからさ、帰ってきたら一緒に食べようって思ってヘンゼルが好きなティラミスにグレーテルが好きなザッハトルテ、たくさん作って待ってたんだ。お茶はアールグレイにする?メープルにする?」
姉さんは助けに行けないからこうしてボクらを労おうとこうして待っていてくれたんだ。助けに行けなかった分帰りを待って、大好きなティータイムをずらしてでもボクらとティータイムをしたかったんだろう。
気がついたらボクは頬を泪で濡らしていた。
「うわっどうしたのよ兄様?姉様まさか兄様に変なこと言った!?」
「違うよグレーテル。ボクはただ、姉さんのこんな優しさが嬉しくってこうなったんだ。」
ボクはその時溢れる泪をどうすることも出来なかった。
その日のアールグレイやティラミス、ザッハトルテはしょっぱかったけど温かくて美味しかった

ヘングレ!
~完~