『さあ、お祖父様に会うわよ。くれぐれも粗相のない様にね。』









『うん。』









お母様は門を開けた。








私は気を引き締めた。








ここから先に行っては、









もう『葉月歌音』としては戻れない。









裕佳梨と準と一緒に楽しんでいた学校にも









頑張って成績を学年一位に保ち続けた日も









ちっちゃい子供達の面倒を見る孤児院にも









あたしが今まで









『葉月歌音』として過ごしてきた









あの町にも









もう、戻れないんだね……………









記憶を失って、









弧寺院に送られ、









たくさん、辛い事もあった。









孤児院の子供達と馴染めなかった事もあったし、









記憶がない事を理由に虐められた事もあった。









だけど…………









今では大切な思い出。








だから、










『……………さようなら。』










私は『葉月 歌音』と別れを告げ、









『詩月 歌音』として生きていく事にした。