昨日もあんな別れ方をしてしまったから、


 正直言ってハヤトに電話するのは気まずい。


 意を決してボタンを押してみた。


 プルプル


「-----もしもし、」


 ハヤトだ。


 声が低い。疲れているようだ。


「あ、タケルだけど、」


「ああ、わかってるよ。」


 すこし語尾が和らいだ。


 いつものハヤトだ。


「あの、昨日は突然悪かった。


その、レイカ、調子はどう?


やっぱ、心配でさ。」


 僕は言葉を選んで言った。


「レイカは、昼間、病院に行ってきた。


点滴を打ってきたんだ。ろくなもん食ってなくてさ。


俺が付いてるってのに。」


 ハヤトは相変わらず看病に忙しいみたいだ。


「あのさ、それで、まだちょっと、変なこと言ったり、する?」


 僕はできるだけ相手を刺激しないように言った。


「あぁ、夜になるとな、月を見ながら泣きだすんだよ。


昼間はぼんやりしてるけど。」