殿ぉぉぉぉぉ!!


 僕は殿から後光の輝きが見えたような気がした。


 殿は僕の番号を盗み見たらしい。


 ヤエちゃんに見えないように


 唇の端を上げた。


「殿、お姫様だっこっていうのは、


 ヤエちゃんを持ち上げるんだ。」


 と、僕は軽く小さい声で身振りを交えて殿に説明した。


 殿がこんなに空気の読めるやつだったとは!!


 ああ!殿!!


 殿がヤエちゃんのほうへ歩いていく。


「ヤエ、こい。」


 殿、ヤエちゃんと一戦を交えるのか?


 なんていうくだらない冗談は置いといて、


 今の殿はやばいくらいかっこいい。


 ヤエちゃんはマドンナにむかって


 勝ち誇ったような笑みを浮かべて、


 殿の首に腕をまわした。


「きゃー!照れる―ぅ!」


 ヤエちゃんはうはうはだ。


 殿は(重かろう)ヤエちゃんにそんなそぶりを一切見せずに


 持ち上げた。


 ヤエちゃんの腕は殿の首と同じくらい、太い。


「はははは、ヤエも、おなごじゃの。」


 と、至近距離で笑みを向けられたヤエちゃんは、


「はうー!」


 と、殿の腕の中で気を失った。


 マドンナがヤエちゃんを心配するふりをして


 タクシーをすごい勢いで読んでいたのは言うまでもない。