「あ、わざわざ悪いな。


入って、こっち、スリッパ。」


 レイカの部屋の玄関でこう僕らを迎えるハヤト。


 否が応でも二人の絆が見えてしまう。


 僕は殿の方もハヤトの方もあまり見ないようにして、


 部屋へと向かった。


 レイカの部屋には何度か来たことがある。


 その時も、こうして四人で鍋をしたりしたものだ。


 でも、今は違う。


「あれ、レイカ寝てるのかな。」


 ハヤトはリビングのカップを見て言った。


 レイカのピンクのマグカップの中はまだ湯気がでている。


「レイカ?」


 ハヤトが寝室へと入って行った。


 ふと、殿を見ると、


 殿はハヤトが消えて行ったドアを睨んでいた。


 僕は切なくて胸がもやもやした。


「レイカ、タケルとマキがきたよ。」


 ハヤトに背中を押され、


 昨日とは別人のやつれたレイカが姿を表した。


「レイカ!大丈夫?」


 僕は不安になって声をかけながら駆け寄った。


 しかし、レイカの瞳は虚空を見つめたまま


 一筋の涙をながす。


「ゅ…き…ぃ…さ……ま……」


 レイカのかすれるような小さな声が聞こえた。


「コト…」


 殿が思わずレイカに近づこうとする。


「キャーーーー!!」


 殿とレイカの距離が0になりそうな瞬間、


 レイカが悲鳴をあげた。


 まるで決壊したダムのように


 あふれ出る何かに耐えられない、


 そんな悲鳴だった。