殿が風呂から出てきたようだ。
僕の用意しておいた灰色の浴衣を着ている。
昨日、現代では自分のことは自分でやるの!!
と、口をすっーぱくして言ったから、
不服ながら、セルフサービスを飲んだらしい。
郷に入ったら、郷に従え!!
でも、殿はマキのままの姿だった。
あれ、何で?
「殿、なんでマキのまんまなの?」
殿は不思議そうに体を見つめている。
「まだ、外が明るいからかもしれぬ。」
ああ、そうか、時計を見ると、まだお昼の1時。
また一つ、殿のことがわかって、僕は少しうれしくなった。
って!!
これじゃ、付き合いたてのカップルじゃないか!!
「タケル、月が出てきたら、
もう一度、湯に入るぞ。」
僕は殿の声で現実に引き戻されて、
「あ、うん。わかった。」
と、答えた。
暗くなるまでの間、
僕はレイカはれっきとした現代っ子だということを
殿に説明した。
これはかなり根気のいる作業だった。
「でも、その、レイカ殿は
私のコトにほんに瓜二つ、なのだ。」
うーん、と僕は頭を抱え込む。
「まぁ、よい。とりあえず、また、湯につかるぞ。」
僕は、「あ、はい。」と、
いそいそと新しいバスタオルを準備した。
って、これじゃ、新婚の新妻じゃないか!!