普通なら、例え昔の知り合いでもなんでもさすがに男の人の家に一人で泊まるなんてないのに…




とにかく家に帰りたくない一心で、あたしはすんなりセイチャンの家の仕切りをまたいでしまった。




この日の出来事が、あたしの学生生活を狂わせるなんて思いもせずに。





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「お―…お邪魔します。」



すんなり泊まる事を決意したクセに、案外緊張してる自分がいた。





「散らかってるけど、どうぞ。」



セイチャンの家は、以外にもウチから近かった。



「いや〜、ホンマ最初は気付かんかったわ。ちょっと大人っぽくなったなぁ。」



セイチャンは目を細めて笑った。その笑顔は、昔と変わらなかった。



「ところでセイチャンて、今何してるの?」




「駅4つ行ったトコで美容師やってんねん。一応これでもトップスタイリストやで?」





自慢気に首から上しかないマネキンの頭に肘を置いたセイチャンは、昔と何も変わらなかった。



そう、セイチャンは何も変わってない。




あたしが知らなかっただけの話。