ママがいなくなってから、初めて訪れた穏やかなあたし達親子の日常。




2日後、ソレは突然やってきた。





〜♪〜♪〜♪〜




ちょうどあたしが大学から帰って来た時に、めったに鳴らない家電が鳴る。





誰だろう?




パパはお店に出てるから、慌ててあたしは電話の子機を手に取る。




「はい、福原です。」


自宅のが鳴ったんだから、もちろんあたしは名字を名乗る。



「はっ、もしもし!どうも!加賀と申しますっ。」



その男っぽい低く強い声に、あたしは思わず子機を耳元から遠ざけた。




「はぁ……あの?」


口元だけを子機に近付ける。


「ヘアサロンRayですか?!」




あ、なんだ。


お店宛てね。




「はい、そうです。少々お待ちください。」




自宅とお店の番号、下1桁が3か4の違いだけなもんで、よくお客様は間違えるのだ。




保留ボタンを押してお店に通じるドアを軽く開けると、シャンプーとかカラー剤の匂いが鼻をくずぶった。




あぁ、私…この匂いが好きだった。




パパとの仲が修復されつつある事を実感出来た瞬間だった。





「パパ、加賀さんて人から電話だよ。」




お客様の髪をセットしてる最中のパパの手が、不自然なほどにピタリと止まった。