居酒屋の個室では、みんながみんな自由にアルコール摂取に励んでる。
あたしは…まだ一杯目から進まないウーロンハイのグラスの汗を無意味に拭きながら、なんだかソワソワしていた。
セイチャン…仕事終わったかな?書き置き見たかな?
もう一度、会いたいな。
「ミア、どうした?」
ハルが頭を撫でながら心配そうな顔をした。
「心ここにあらず?的な?」
ハルは片手で近くにあった唐揚げを摘んだ。
誰かに髪とか頭を撫でられるのが好きだった。
なんだか安心できた。
なのに…今日は誰に撫でられても1日中しっくり来なかった。
違うの。
欲しいのはこの手じゃない。
ふと、そう思ってしまう自分に気が付いた。
「お〜い、ミアー?聞いてる?」
ハルはあたしの顔の前で手をヒラヒラして見せた。
ガタンッ――
「ゴメンっ!心ここにあらず!」
あたしはお店に入って、20分ぶりに言葉を発すると、カバンを手に取って勢いよく個室を出た。
「えーっ!ミア帰るの?」
「何事?!」
「おいミア〜?!」
みんなの声は聞こえないフリ。
あたしの中の何かが、あたし自信を突き動かしてる。
帰りの電車の中で頭を巡っていたのは、セイチャンのあったかい手の感触だけだった。

