お母さんはいつもの「大丈夫」

を言わない。

「ねえっ、大丈夫?」

身震いをした。

「華依?」

華依(かえ)とは、

お母さんの名前。

お父さんがお母さんの手を覗き込んだ。

ティッシュには血痰があった。

「お母さんっ?!!」

「華依・・・きっと、大丈夫だよ、咳で、どこかの血管が・・・」

そういいながらも声が震えている。

お父さんはもしかしたら

今までの症状から何か知っているのかもしれない。

「華依、一応、病院行こう。」

「ダメよ・・・お父さん会社だし、迷惑かけちゃう。それに私も仕事入っているし・・・聖人と夏休みはいっぱい遊んであげるって約束した・・・!!」

「お母さんの体調のほうが、大事だよ!!」

それでも、「大丈夫」といって

聞かなかった。