夕食の時間帯。




ざわつく食堂には目当ての少女が居る。

珍しくひとりで居てちょうど良かった。



さりげなく、少女が座るテーブルの横を通る。

ちらりと見ると予想通りにわたしを見ている彼女。


予定通りに、わたしは横を過ぎる一瞬、
憎しみを込めて冷たく睨み返す。

演技は必要なかった。

強く目を見る。


彼女――碧は
咄嗟に目を逸らした。




今かな。




わたしは新聞に挟んでこっそり持っていた紙を、床に向かってさりげなく手放す。

あくまでもさりげなく、自然に。


そのまま気付かないフリをして歩く。




「夢瞳、何か落としたよ」


「…え?」



声に振り向くとそこには、

『偶然』

通りかかった照がわたしの落とした紙を拾ってくれていた。


「『変質者 ストーカーにご注意』?
あ。オレもこの紙近くでもらったなー」


「踏み切りの横?」


「そーそーでも危ないなー女の子って。
気を付けなよ」


「大丈夫よ。
わたしその男の対象外だもん。書いてるでしょ?」


「あぁ…茶髪でショートの派手めの子ってヤツ?」


「うんそう。
だから狙われるとしたらまずは別の人じゃない?」


打合せ通りの会話をそこまで言い終わると
もう一度、碧を一瞥する。


「心配するなら別の人ね。
あぁあとそれ。要らないから捨てといて」


会話を終了させて取りに行く食事。
ちらりと後ろを向くと照と碧が何か話していた。