包帯は指先まで念入りに巻かれていて、 感覚が分からないほどだった。 「どうした、この手? 誰にされた?」 「これは… 誰かにされた訳じゃないんだよ」 「じゃあ怪我?」 照。 心配してくれるの? そういえば、父が死んでから5年間 誰かに心配されたことなんてなかった。 照はわたしを気にかけてくれるんだね。 「ありがとう」 「え?」 「ありがとう。 心配、してくれたから」 わたしは言った。 素直な気持ちを。