20時の食堂。



珍しく人が多い時間に居るとやっぱりろくなことはない。


上から呼ぶ少女の声に、
見ていなかった新聞から目線を上げた。


「碧(ミドリ)」


学校のお洒落なクラスメイトたちみたいに明るい茶色に染めた髪が目立つ少女だ。


わたしが見る時には必ずもうひとりセットで居る少年が、例に漏れず碧の横に居た。


「何の用?」



「珍しいわね、あんたがこんな時間に」


「そーね、今日は偶然。
でももう部屋に戻るわ」



面倒なことになる前に早めに退散しよう。

だってコイツらと関わって良い思い出なんてないし。


そう決め込むと、
学校の教室と同じ造りの椅子を、乱暴に引いて立ち上がる。



新聞を掴んだ。



「待てよ」


見るからにヤンチャな男は、確かわたしより2つ上の高校2年生。


大和(ヤマト)は新聞ごと、わたしの手を強引にに掴む。



触んなよ。



振りほどこうとするのに、大和は離さない。


「冷てぇなぁ夢瞳
俺らの仲じゃん。逃げんなよ」


腕を引っ張り、
こんな場所で抱きついてくる大和。


周りには、
まだご飯を食べている少年たちや、卓上ゲームで遊ぶ幼い子たちがまだ居る。


今は騒ぎに手を止めて、
好奇の目をこっちに向けてきていた。



「子供が居んのよ、やめて」


離せよ。



ていう思いをたっぷり込めて力一杯胸を押し返した。