どうして気付かないの?
もうずっと、何度も何度も違う名前を呼んだよ。
苦しい胸のうちを隠しきれず、
目にいっぱい涙をためて、
精一杯父を見上げる。
父も何故か熱に浮かされた様に、わたしを見つめて……
「圭織っ」
小さい身体が強く抱き締められたと思うと、
激しいキスがわたしを襲った。
「んぅっ?!」
口からも鼻からも感じるアルコールの匂い。
唇を割って入る、生き物みたいなぬるぬるした感触。
嫌悪感が沸き上がった。。
いやだ。
いやだいやだいやだ!!
7歳の小さな手で、非力な力で、
わたしは力一杯拘束する身体を押し返した。
数秒後、口づけから解放されると、
父は母の名を呼び、わたしの服を脱がしていく。
無遠慮に肌を滑る手が、
首筋に、鎖骨に、肩に、胸に、
容赦なく浴びせられる口づけが、
ひどく汚いものに思えた。
驚きと恐怖で硬直する身体。
本能は逃げろと指令を出しているのに、
でも、動けない。
涙は顔中に広がるほど流れているのに、嗚咽は喉の奥で途切れてしまう。
恐かった。
「ゆめ……だ…よ……お父…さん」
やっとのことで、
泣いて震える声で反論した。
