夏が終わって秋が過ぎ、
冬本番もそろそろかと思える冬休み。
父へのわたしの感情はすっかり負のものへと変化していき、
よく笑って元気だったわたしから、
いつの間にか笑顔が消えかかっていた。
「最近夢瞳は元気がないな。
どうしたんだい?
学校で何か嫌なことでもあるのか?」
その日、夜遅く帰宅した父は、
わたしを『夢瞳』と呼んで心配そうな顔を向けてきた。
どことなくいつもと違う父。
少し顔が赤い?
お酒を飲むという概念がなかった幼いわたしは、
どこか違う父を感じながらも、目の異常な輝きに気付くことが出来るわけがなかった。
『ねぇもう間違わないで』
何度も悲しくそう願いながら、それでも大好きな父に抱きつく。
「嫌なことなんてないし、学校は楽しいよ。
今日もね、先生が……」
「本当かい?
お父さんはね、お母さんと約束したんだ。
絶対に夢瞳を幸せにするってね」
優しい瞳。
頭を柔らかく撫でてくれる手。
「そうだよね、圭織?」
今『夢瞳』と言ったその口で、今度はわたしを『圭織』と呼ぶ。
真っ黒な目も、
わたしを見ているのに、
本当はわたしじゃない人を見つめている。
残酷な言葉に、
声もなくうつむく。
