次の日の夜、部屋の窓にライトが当たった。
きっと昨日言ってた合図だ。
薄く開けていた窓を閉めて下へと降りると、
秘書の真田恒輝はさっきとは違うスーツ姿で待っていた。
写真と同じ姿。
『今晩は。柚木(ユズキ)碧さん』
『こんばんは…』
『照様より、市原(イチハラ)大和くんのこと、お話を伺っております。
夢瞳様の中では、私がストーカー役ということはご存じですね?』
『知ってるわ』
『そのままの設定で、大和くんには私が碧さんのストーカーだとお伝えします』
秘書は突然の提案を、なんなく私に告げる。
『……は?
なんで、ですか?』
『碧さんと大和くんは、話し合うべきだと照様が仰っていました。
大和くんは、そんな事件でもない限り素直にはならないだろうと。
彼はお節介なんですよ』
全く。
本当にお節介だわ。
自分も本当は夢瞳が好きなくせに。
『それに、もう拒否権はないですよ。
彼は大和くんに、もうお話をされているでしょう』
上等。
『分かったわ。
秘書さん、
照にありがとうって伝えといて下さい。
それから、あんたのお願いも聞いてあげるって』
仕方ないから、あんたの望み通り、夢瞳と友達になる様に努力してみるわ。
『ねぇ秘書さん。
社長秘書なのに大変だね』
『照とは友達だからね。
これはプライベートだよ』
そう笑う彼は、慇懃な彼よりも素敵に見えた。
そして次の日。
照の思惑通り、大和の気持ちを聞くことが出来た。
紆余曲折はあったけど、
私と大和の気持ちは重なって、本当のカップルになることが出来た。
