【完】約束=願い事


「崇佑…?」


すっかり自分の世界でうろうろしていた俺を、夢瞳さんの声が現実へと引き戻してくれた。


「あ。ごめん、夢瞳さん。
今日はどうしたの?
返事しに来た?」


まだ静かな日曜日の朝の道を歩く。



「うん。
でも、結局まだ言ってないわ…」


「それって…さ」

気持ちそのままを表す恐々した声で聞く。


「良くない返事?」


「……」


沈黙の肯定。

目は口ほどにものを言う。

だから目を合わせられない。



「ねぇ、夢瞳さん。
施設は好き?」


「え。施設?
もちろん好きじゃないわ。
あの場所に居るしかなかったから居たの」



そうだよね。

俺が知ってるだけでも数えきれない問題が起こる施設。

多分、言葉なんかで表せないほどに嫌な場所なんだろう。



「俺、謝らないと…」


夢瞳さんが左横で俺を見る気配…

走る緊張、高鳴る鼓動。


「父さんたちはちゃんと説明したのかな?
出来れば、ふたりのこと悪く思わないでほしいんだ。
あ、父さんと照兄のことだよ。あと恒輝さんのことも…」


夢瞳さんは目をそらさない。


「俺が悪いんだ」