そんな力が今のオレにあるわけもないのに。 泣いている君はいつも強がる君の本当の姿の様で。 頼りない少女の様で。 気持ちがざわついた。 もう一度名前を呼んで、身体が勝手に動き出す時。 「夢瞳さん!」 後ろから聞こえた崇佑の声。 夢瞳は素早く涙を拭いて、瞬きを繰り返す。 「俺が送ってくよ、照兄。 行こう、夢瞳さん。 俺喋り足りないよー」 わざと元気に振る舞う崇佑を見て、オレは静かに目を伏せた。