「御木本さん」
施設長が退席した後、
わたしから口を開いた。
「どうして、わたしの後見人に…?」
「そうだね。
どこから説明しよう…」
ゆっくりと話が始まった。
少し砕けたしゃべり方に変わった彼は、さっきよりも確実に素敵な大人に思えた。
「夢瞳さん、君は圭織さんの娘さんなんだね」
圭織さん…
お母さんの名前。
まさかこんなところで聞くとは思っていなかった名前。
なぜ、知ってるの?
驚きに、過剰に反応してしまう身体。
瞬間的に震える手と、背中に嫌な汗を感じた。
ぐっ、と両手を握ると、手にも汗をかいていた。
「警戒しないでほしい…と言ってもするか。
それは仕方がないね。
では、嘘を吐いても仕方がないことだ。最初にはっきり言っておこう」
一度彼は言葉を切った。
「夢瞳さん、君のことを少し調べさせてもらった。
そこで圭織さんのことを知ったんだ。
ただ、
誤解をしてほしくはないんだが、決して君の悪いところを調べようと思った訳じゃない。
君という人を知る情報の為に使った手段のひとつに過ぎないんだ」
真摯にそう説明する御木本。
調べることは普通だろう、と思う。
仮にも後見人になろうと思う相手を全く知らないようじゃ話にならないし。
だからって、もちろん良い気はしない。
信用する訳じゃない。
けど、それよりも母の話が出たことに驚いた。
それに、わたしをどこで知ったのか、気になる。
とにかく、話を聞かなきゃ。
わたしは話を促すために、静かに彼を見返した。
