良くない。

全く良くない。

もし、素手で鶏を引きちぎる女でなくても幼女でなくても、ダイニングの窓を割るのはやめて欲しい。


「…ずいぶん埃っぽいところですね」


首を横に振る俺を無視し、ローズは鍋をテーブルに置く。

昔は純白だったシルクのテーブルクロスは日光に黄ばみ、埃にまみれている。

もともと他人にやらせていた家事を今更やる気もなく、肉球と長い爪で固めた俺の手では引き裂いてしまいかねないので放置状態だ。


「私、暇があったら片付けて差し上げましょうか?」

「結構です」

「片付けて差し上げますね」

「…」


近所付き合いとは時に、笑顔の押し問答を繰り広げるものである。