「こんばんはー」


その日の晩、破壊音と共にまたローズが襲来した。

手には美味しそうな匂いをさせた鍋を持っている。

すっかり血飛沫を拭い落とし、夜の暖かい光に照らし出された彼女はその顔を出してきたところさえ見なければ、聖夜に讃美歌を歌いに来た少女のようだった。


「ローズさん…そこは玄関じゃないんですが」


勇気を出して、教える俺。
ローズはきょとんと自分の出てきたところを振り返る。

そこはダイニングの窓。綺麗なステンドグラスは二度の通過で見る影もない。

そして、天使のように微笑んで言った。


「ごめんなさい。裏口が見つからなくて」
「普通に正面玄関から入って来てください」

「お隣さんなのですから、気軽に行き来できる方が良くありませんか?」