魔女の瞳Ⅴ

武羅人の体が縮むバネのように前傾姿勢になった。

来る…!

私は障壁に魔力を注ぎ込み。

「行くぜ…!」

武羅人はまたも馬鹿正直に突進してきた!

左右の拳を何度も何度も障壁に叩きつける!

それは型なんてものは全くなく、ただ力任せに殴りつけるだけの拳だった。

まるでそこいらの喧嘩自慢…いや、理性も何もない獣だった。

「待ちなさいよ!ここで闘ったら人目があるわ!場所を変えなさい!」

武羅人の暴風のような攻撃を受け止めつつ、私は言う。

「人目なんぞと最強の魔女とやららしからぬ発言だな」

武羅人の横蹴り!

それだけで私の体はまたも大きく吹き飛ばされた。

幸いに障壁のお陰でダメージは皆無だったけど。

「目撃されたなら口封じすりゃあいいじゃねぇか。愉しい喧嘩の最中に、興醒めするような事言うんじゃねぇよ」

説得も何もあったものじゃない。

武羅人の言い分はめちゃくちゃだった。