魔女の瞳Ⅴ

来た来た。

慌てて家を出たのだろう、靴の踵を踏んだまま走ってくる、特有の足音が聞こえてくる。

私は少し呆れたように振り向いた。

「毎朝毎朝懲りないわね。少し早めに行動するとか考えないのかしら」

そう言うと、寝癖すら直さずに出掛けたらしいその少年は、呼吸を整えつつ返答した。

「そう言うなって。メグの言った『日課』をこなしてたら寝るの遅くなるんだよ」

返答というよりは口ごたえ。

随分と生意気になったものだ。

「あら、それは貴方が未熟でいつまでも上達しないからよ?私のせいにしないでちょうだい」

彼から見えない角度で微笑を浮かべつつ。

私はその少年…宮川修内太に背中を向けた。