ゼロは回しながら、目を輝かせて、歌うように言う。

 そして、何度も言うが、彼は美少年である。


「そして主人公の女子が言うんだ!!

『アッ、ごめんなさい!!』

でも、ぶつかった男の方は、

『どこに目をつけているんだ!!』

と、言い放ってしまう。」



「「ギャー!!とーめーてー!!」」



「 …そう、まさしく最悪の出会いから持っていくんだ。

あぁ、そこで男が無理矢理、女子のファーストキッスを

うばってしまうのもいい!!

いい!!

いい!!」



「「きーもーちーわーるー」」



「そして、二人は、同じクラスで、

席は隣同士!!

やる気のない教師のおかげで同じく学級委員にされてしまう!!

最高だぁ!!!


ケータイ小説ばんざーーー」






  「浅岡さん!!」
 





 透き通るような美声が公園に響いた。


 耳をふさぎたくなるような夢樹とレー美の声も聞こえない。


 ゼロもジャングルジムを回す手を止めた。


 しかし、已然として、ジャングルジムは夢樹とレー美をのせてキィキィ回っている。




「この、軍手、浅岡さんの、かな?」



 美声の持ち主がジャングルジムに近づいてくる。


 辺りが一瞬にして百合やフリージアが咲き誇る。

 蝶が舞い、小鳥のさえずりさえ聞こえる。

 午前中なのに星が瞬いている。



 キィキィキィキィー


   シュッ!!



   タン!!


 そんなキラキラワールドに軽やかに着地したのは夢樹だった。


「宝田くん!!!」


 夢樹の眼球にも星が飛んでいる。


 回転が弱くなったジャングルジムのなかで、遠心力に体を預けながら、レー美はつぶやいた。

「なんで、あのコ、フラフラしてないのよ…


オエエーーーッ!!」