その部屋はクモの巣のかかった古めかしいシャンデリアがぶら下がっている。


 蝋の溶けだしたキャンドルが至る所にひしめきあっっている。


 壁には、60年代のアメリカの女優のピンナップ。


 ボロボロのダーツ。


 豪華な額縁に収められた裸婦画。


 カーテンは真赤な別珍だったが、今はもう色褪せて擦り切れている。


 革張りのソファに猫足のローテーブル。


 キャビネットには真っ赤なバラが異様に新鮮に飾られている。


 ビリヤード台にはやりかけの3と6の玉がころがっているが、白い親玉は見当たらない。


 ジャン卓の上には乱雑に崩れたパイと大理石の灰皿いっぱいの吸いがら。



 カウンターは6人分の椅子が余裕をもって座れるように配置してある。


 カウンターのテーブルはいい飴色で、


 その奥にはグラスがキラキラと輝きながら、


 シャンパンを入れてもらうのを待っている。


 年季の入ったエスプレッソマシーン。


 またその奥には誰のコレクションか、


 アンティークのカップ&ソーサが並んでいた。


 そこの床を怠惰な動きでモップをかける男が一人。


 ブロンドのオールバックから、一筋の前髪を乱れたらしている。


「マリオ。」


 マリオ、と呼ばれた男は声のする方を振り向いた。


 マリオのアゴにはひっかき傷がある。


「あなたって人は…」


 クスクス笑いながらそう続けて入ってきたのは、女だった。


 艶やかな黒髪をポニーテールにゆいあげ、


 前髪は大きな瞳と眉の間で切りそろえられている。


「ほんと、懲りないヒト ネ」


 マリオは降参だ、と言わんばかりに両手を挙げた。


「リェン、もう、許してくれ。」


 リェンは切れ長がの瞳を細くして、微笑んだ。