「私はまた、その吸血鬼に襲われるのでしょうか?」


不安をあらわにする舞に、津那魅は無情にも、肯定の言葉を口にする。


「十中八苦、来るだろうね。奴は、君を手に入れる事を、諦めてはいない」


人事の様にアッサリと言われ、舞は、おもわず口元を手で覆った。

指先が震えている。


「私は……一体どうしたら……津那魅さん……」


助けて、と喉元迄言いかけて言葉が出ない。

津那魅は舞から目線を外し、何やら考えていたが、


「取り合えず、舞ちゃんの家族と連絡をとろう。きっと心配しているから」


そう言うと、舞を安心させる為微笑んで見せた。







「確か……神宮寺って言いましたよねぇ……舞ちゃん」

「あっ! はっ、はいっ!」


津那魅に急に話しを振られて、驚いた舞は、あわてふためいた。


「まさか……あの、神宮寺?」

「?」


津那魅の、問い掛けの意味が掴めない。


「警視総監、神宮寺 颯」

「父をご存知なのですか!?」

「あー、やっぱりそうか……」


あらかさまに津那魅の表情が変わる。

嫌そうな顔。

舞は、そんな津那魅を見て再度心の中に不安が甦った。


『お父様、津那魅さんにこんな顔をさせるだなんて、一体何をなさったのですか!?』


舞は泣き出しそうになるのを堪えて、津那魅に問うた。


「あの……父が津那魅さんに何が酷い事を……」

「んー……。私に、と言うより相手が、可哀相で……」


頓珍漢な津那魅の言葉に、舞はちゃんと相手にして貰えないといきどおる。

津那魅に悪気は無いのだが、舞の心情は穏やかで無い。


「ちゃんと順を追って話してあげるから」


津那魅は目を細めて舞を見て、


「そんな顔しない」


耳元で囁いた。