異風人

途中で、トイレにも行かなかった吉平は、胸を反らせて立ち上がろうとした。その反らせた角度が少しばかり大きすぎたようである。立ち上がる前に、吉平の上体はステッキが浮き上がるほどに、後に傾斜したのである。心得ていたママが、つっかえ棒をした。そして吉平は、ステッキに身を委ねるようにして立ち上がった。ステッキの先端は辛うじて地面に着いてはいるものの、手元の位置は前後左右にふらふらとして定まらない。胸を反らせているので、身体の重心が後方にずれている所為である。この重心のずれによって、前進する方向への力の分力が小さくなる。