異風人

このいきさつには、小夜の登場はなかった。その理由は、あえて言うまい。山高帽子と燕尾服に身を包んだこの出で立ちについては、三人の会話にはあげなかったのである。いや、あげなかったと言うよりも、吉平のその風姿が、十分に語っていたからである。普通の者であれば、酒の力が働いて、正体を現わすのであるが、吉平の姿態は、辛うじてその出で立ちに包まれて威厳を保っていた。
「今日は先生の講義を受けて、生まれ変わった気がします」と、部長はそれとなく終演を告げる。
「先生、コズエがいなくても来て下さいね。この店には先生の講義を聞きたい民が大勢おりますから」