異風人

「私も部長のおっしゃるとおりだと思いますわ」
「私は、小さいころ親父によく言われました。男の子は、大いに喧嘩をしろってね。めそめそ泣いて帰ってくると叱られました。だけど、人間の急所だけは教わりました。喧嘩をしてもよいが、急所だけはいけないよってね。女の子は、顔が命だからって、母親にも言われました」
「それで、加藤君は喧嘩したの?」
「中学時代は番長でした。こんなことがありました。学校の帰り道に、友達と笑いながら歩いているところを、自転車に乗った酔っ払いのおじさんが通りかかったのです。そのおじさん自分のことを笑ったと思い込んで、因縁をつけてきたんです」
「それでどうしたの?」
「全速力で走って家に帰り、木刀を持って引き返したんです。その様子を見ていた母は、なにごとが起きたかと、顔が青ざめたそうです。途中でそのおじさんに出合ったのですが、ただすれ違っただけで、事件は起こらなかったのです。後で母に聞いたのですけど、そのおじさん家に来て、お宅の息子に笑われたって因縁付けたそうです。母は酒を出して詫びたそうです。多分酒が目当てだったんでしょうって、母も言ってました。そのおじさん、この町では有名な酒のみで、身上を潰したそうです」
「その木刀で殴るつもりだったの?」
「単に脅かすつもりでした」