異風人

吉平のきっぱりとした言い方には、格調高い自信に満ちた響きがあった。普通の者であれば角が立ち、こうした吉平の言い方に、腹を立てて反発するのであるが、何故かこの二人には、その反発心は湧いてこなかった。その謂れは、山高帽子にステッキ、それに燕尾服から受ける浮世離れした様がそうさせたからである。即ち、それは、吉平から放つ異様な光のなせる業なのである。
「全くその通りですね。私は重役に押し潰されていますから。サラリーマンの世界では、例えその考えが間違っていたとしても、それに従わなければならないのです。押し潰された姿には、威厳はありませんからね」
「よろしいかな、真実は一つである。間違った考えは、真実ではないと言うことである。従って、人それぞれに考えを持ち、各人が自分の考えを主張するようになる。この連鎖が鏡面の水面を阻害しているのである」
 この吉平の言葉の所所には、どこかで聞いたことのある小夜の言葉が散りばめられていた。
「私達サラリーマンは、会社の利益を追求しなければなりません。このサラリーマンの世界の中で、真実とはどういうことなのでしょうか?」