異風人

(4)
 何時もであれば、あたかも待ち兼ねていたかのように、コズエが出迎えてくれる。そこには、コズエの姿はなかった。吉平の逸る気持ちは、尖った掻き氷に熱湯をかけたかのように、がさぐさと崩れたのである。ステッキを操る手が、ぱたりと止まった姿に、その様が現れていた。そのような吉平を見て、裕子は、手を差し伸べたのである。庇の奥の眼差しからは光沢が失せ、腑抜けた足取りで身をかがめ、やっとの思いでステッキに身を委ね、裕子に手を引かれて、店員が見守る中を進んだのである。結婚式のバージンロードであれば皆、拍手喝采を送るのであるが、店員は皆、口に手を当て笑いをこらえた。そして吉平は、何時もの席に辿りついたのである。席についた吉平は、糸の切れた操り人形のように、へたへたと座り込んだ。店の者全員は、息を飲んで、その様子を見守った。裕子としては、とてもとても、コズエが店を止めたことを切り出せなかったのである。そして、裕子は、「帽子とステッキをお預かりしましょう」と、言うこともできなかった。時間も早く、客も疎らであった。