吉平は、波紋の源について考え込んだ。目上の者を敬わねばならぬと言うことは、紛れもなく真実である。敬う心を芽生えさせるには、それ相当の威厳が必要である。このことは、小夜との関係を見れば、事実として証明されている。従って、威厳と、敬う心との間に因果関係があることは、真実である。だとすると、フリータという身の置き所には、この真実があるのか?吉平は、考え込んだ挙句、このように切り出した。
「コズエにストレスが無いということは、目上の者を敬うという心があるということだな?」
「ええ、そうですよ!ご主人様は客で、私は従業員として仕える侍女ですから。それに、フリータは新芽を育てる肥料だと考えているんです」
コズエの口から軽やかに出る言葉の一つに、吉平は、又考え込んだ。ご主人様と、侍女との関係は論理の筋通りであるので、この点は理解できる。然しながら、「フリータは新芽を育てる肥料」とはどういうことか?この場において、ご主人様としては、コズエに質問するわけにはいかない。威厳を損ね、且つ、深手を負わされかねないからである。切羽詰った吉平の頭の中を、小夜が横切った。うつむき加減に威厳を保っているその様は、威厳と腑抜けとが混在した奇妙な混色を呈していた。そのような吉平を見てコズエは、
「飲み物を追加しますか?」と、隙間をあけてくれたのである。時間はまだ早く、客席は所々空いていた。「今日のところはこれでよろしい」と、吉平は、そそくさと席を立ち、来た時のような軽やかなステッキの操りはなく、引きずるようにして、帰路についたのである。深手を最小限に抑えた吉平は、いくらかの後遺症を払拭するために、小夜を捕らえた。
「コズエにストレスが無いということは、目上の者を敬うという心があるということだな?」
「ええ、そうですよ!ご主人様は客で、私は従業員として仕える侍女ですから。それに、フリータは新芽を育てる肥料だと考えているんです」
コズエの口から軽やかに出る言葉の一つに、吉平は、又考え込んだ。ご主人様と、侍女との関係は論理の筋通りであるので、この点は理解できる。然しながら、「フリータは新芽を育てる肥料」とはどういうことか?この場において、ご主人様としては、コズエに質問するわけにはいかない。威厳を損ね、且つ、深手を負わされかねないからである。切羽詰った吉平の頭の中を、小夜が横切った。うつむき加減に威厳を保っているその様は、威厳と腑抜けとが混在した奇妙な混色を呈していた。そのような吉平を見てコズエは、
「飲み物を追加しますか?」と、隙間をあけてくれたのである。時間はまだ早く、客席は所々空いていた。「今日のところはこれでよろしい」と、吉平は、そそくさと席を立ち、来た時のような軽やかなステッキの操りはなく、引きずるようにして、帰路についたのである。深手を最小限に抑えた吉平は、いくらかの後遺症を払拭するために、小夜を捕らえた。


