異風人

ほぼ完全に理論武装をした吉平は、弾んだ足取りで、胸を張り、ステッキを軽やかに操りながら何時ものように店のドアを開けた。そして、案内されることなく吉平は、常連客のように自ら自分の席に着いたのである。
「コズエ昨日の話の続きだが」と言われて、コズエは、
「どんな話でした?」と、応える。
「課長が部長に押し潰されると言う話だ」
「ああ、あの話ね、それがどうかした?」
「昨日、コズエが席を立ってしまったので、噛み砕いた話はできなかったが、今日はじっくりと話しをする。よいかなコズエ」
「はい、はい」
「よいかコズエ、課長が部長に押し潰されるということは、部長に威厳が無いということだ」
「それは逆だと思うけど、先生、いやご主人様。部長に威厳があると、かえって近寄り難いと思うけど?」
「それが民の考え方だ。部長に威厳があれば、課長には部長を敬う心が芽生える。目下の者は、目上の者を敬う。このバランスこそが必要なのである。民は、権力者に従わねばならぬ。これで世の中は、丸く収まるのである」
「それじゃストレスが溜まると思うけど」
「それは、人を敬う心が芽生えていない証拠だ。コズエには、ストレスがあるのか?」
「ストレスは溜まっていないけど。フリータだから」