異風人

「ご主人様、大学と、波紋と、名誉地位はどんな関係にあるのですか?」
「よい質問だ、噛み砕いて語らねばならぬ。先ず、水面に投ずる石は、真実という石でなければならない。真実は一つである。従って、水面にできる波紋も一つである。故に、真実の波紋には、波紋同士がぶっつかって、波紋が消滅するという現象は起きないのである。この論理を実現するには、鏡面のような水面が必要である。波紋の大きさは、投ずる石の重さに比例する。ここまでは理解できるね」
「ええ、まあ」
「そこで、真実という石、鏡面のような水面、石の重みと言う三つの条件は、大学という場で学んでこそ、備わるのである。この三つの条件を基礎として、世の中に出た者が名誉と地位を得るのである。そして、名誉と地位を得たものが、石を投ずれば、真実の波紋が広がり、人間社会に貢献することになる。そして、名を残すことになる」
「ああそうなんですか!大学に行かなければ、三つの条件は得られないのですか?」と、コズエは、「はい、はいご主人様」と、吉平を客としてあしらったのである。
「そういうことになる。大学に行けば、私のような名誉、地位を備えた教授の話しを聞けるし、優れた本を読むこともできる。教授の話や、優れた本は、真実を語り、人を真実に染め、その知識は、石の重みとして現れるのである」
「そう言うことなら、私は大学に行く必要はないと思うけど!この店で先生の話しを聞けるし、暇な時に本を読むこともできるじゃないですか?」
「それだけではいけない。大学を卒業したという肩書きが必要である」
「店には、肩書きを付けたいろいろな人が来ますよ。部長さんやら、課長さんやら」
「その民は、どんな会話をしておる」
「そうね、部長は重役に押し潰され、課長は部長に押し潰され、不満をぶちまけていることが多いわね。多分重役は社長に押し潰されていると思うけど」