異風人

だが、この放つ光は、夏の夜に虫を引き寄せる街灯でもなく、鵜飼のかがり火でもない。むしろその逆で、興味をそそるが、拘りをもたないようになるべく離れて、横目で眺める光であった。極めてたまたまではあるが、中には、光を意識せず、かつ、無頓着に迷い込む民もある。蜘蛛の巣に引っ掛かった獲物を逃がすまいと、吉平は、躊躇することなく、確信をもって、その民に声をかけたのである。突然襲い掛かられたその民は、びくりとのけ反り、素早い反射神経で飛び跳ねるように吉平を大きく迂回して、足早に流れの中に消えていった。何故だろうと、吉平は、不思議に思った。夏の夜の光に誘われて飛び込んでくれた獲物と理解したからである。仕方なく吉平は、行き先の定まらぬ足取りで、民の流れに逆らうことなく移動したのである。