異風人

吉平は、その絵に吸い込まれて行くのを覚えた。この絵は、まさしく吉平がたった今体感した静寂の世界そのものであった。吉平は、精神的に疲れ果ててはいたが、爽やかな気分であった。書斎から出て来た吉平は、深い々淵底に沈んでいるように、静で、かつ、穏やかであった。髪の毛も衣服もくしゃくしゃで、激しくもがき苦しんだ痕跡を残して、スーっと立っているその姿は、まるで仙人を思わせる趣があった。吉平は、呟いたのである。
『葛藤が激しければ激しいほど、表情は穏やかになる』と。