異風人

「小夜!」
「はい、ご主人様」
「今日は多くの民と接触した」
「それはよろしかったですね」
「だけど小夜、民は私の存在を意識しない。どうすればよい」小夜は少し考えて、
「服装を変えればどうでしょう」
「どんな風にだ!」
「なるべく目立つように、原色に近いものはどうでしょう。赤などはいかがでしょう」
「赤は困る。威厳を損なう」
「ご主人様のご希望に添うには、羽織袴か、山高帽子ぐらいしか小夜には思い付きません。奥様は何とおっしゃいますかどうか」
「伊沙子のことは気にすることはない。私の論理を実現するためだ。羽織袴は、あの民と接触するには非活動的である。山高帽子がよい。明日、早速、調達してくれ」
「そう言えば、この前、奥様に捨てるように言われた帽子があります。何でも昔、お爺様が愛用していたものとか、おっしゃってました。それに、ステッキと燕尾服もありました」
「捨てることはない。先祖が愛用していた物ならなおさらである。それでよい」
「でも、お爺様は大柄な方で、ご主人様には少し大きいと思います」
「かまわぬ」