異風人

《女は、この楽しい時間を我が子とともに過ごすのである。そして、生まれる時が来て、早く我が子の顔を見たい。早く、早くと。出産の時は、生死を分ける苦しみである。この苦しみを乗り越えられるのは、長い付き合いから生まれる愛であると言った。この愛は、実感した女にしか解らない』》
 吉平は、電気を消した暗闇の中で、この小夜の優しい言葉を、何度も思い起していた。子を思う母の愛とは何か?吉平の鬱憤は、小夜の優しさの中で、静まっていくのを覚えたのである。
《そして小夜はこのようなことも言っておったな。『確かに、そうだと思います。母親の子を思う愛(心)は、教育では養われず、男性には不可能です。そのお方の質問は、偉い人の話しを聞き、書物を読むだけでは、育むことができないものがあるのでは、と言うことだと思います』》